「食育」と歯の健康の密接な関係

「食育」という言葉を耳にしたことは、ありますか?食育とは「子どもたちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けること」です。

丈夫な歯を作り、生涯を健康的に過ごすためには、歯みがきはもちろんのこと、 毎日の食習慣が大切です。やわらかい食べ物ばかり食べていたり、時間を決めずにだらだらと食事や間食をしていると歯や顎の骨の発育を妨げたり、歯の健康にも大きく関わります。

今回は、子どもたちに知って欲しい歯の健康に関わる「気をつけるべき食習慣」や食に関する知識をいくつかご紹介します。

気を付けるべき食習慣

普段よく食べているものや、食べる回数などは歯の健康と大きく関わっています。虫歯を予防するために以下の3つのことに注意しましょう。

●だらだら食べをする

虫歯は、一度に食べる量よりも食べる回数が関係しています。だらだらと食べ続けていると、常に口の中に物が入っているため、酸性の状態が続き虫歯のリスクが高くなります。そのため、だらだら食べは避け、おやつなどの甘い物は、1日に1回と時間を決めるなど、お口の中に食べ物が入る回数をできる限り減らしましょう。

●噛まずに食べる

やわらかい物ばかり食べていると、あまり噛まないまま飲み込んでしまう癖がつきます。噛まないことで消化を助ける唾液が十分に出ず、食べものが細かく砕かれていないまま胃に入るため、消化も不十分になってしまいます。食事の時は、硬めの食材を多めに摂り、1口につき30回は噛むようにしましょう。よく噛むことであごの骨の成長や噛み合わせにも良い影響を与えてくれるだけでなく、唾液の分泌量が多くなることで、虫歯の予防にもつながります。

●糖分の多い食べ物

お子様の大好きなジュースや甘いお菓子の中には、虫歯の原因となる糖分がたくさん含まれています。お口の中に糖分が長くとどまっているほど菌が増殖し、虫歯になりやすくなるのです。ある程度の糖分摂取は問題ありませんが、虫歯のリスクを抑えるためにも、おやつの内容や与える時間などを工夫して、虫歯を予防しましょう。

おやつ=甘いものは間違い

おやつというと甘いケーキやチョコレート、おせんべいなどのお菓子を思いうかべる人も多いかもしれませんがおやつは朝昼晩の3食では足りない栄養を補う役割があり、補食といいます。子供は1回の食事量が少なく、3回の食事で1日のエネルギー所要量を摂取することが難しいため、おやつとして補食をとることをおすすめしています。おやつは、甘いお菓子やジュースではなく、おにぎりや野菜や果物などで3食で足りない分を補えるものが理想的です。

【おすすめのおやつ】

●具沢山おにぎり

●蒸した野菜(さつまいも)

●フルーツゼリーやヨーグルト

●ピザやチーズトースト

この他には、普通の食事で不足しがちなカルシウムを補えるチーズ、小魚、ナッツ類もおススメです。よく噛むことで唾液の分泌を促し、虫歯予防につながります。3食でバランスが取れている場合は、食べすぎないように歯に優しい糖分ゼロのキシリトールガムやタブレットもおすすめです。

虫歯になりやすいお菓子とは?

●キャラメルやアメ、ガム、チョコレート

●ドーナツやケーキ

砂糖を多く含んでいて長時間口に入れるものは歯を溶かし続けてしまうため、お菓子の中でもリスクが高いです。ドーナツやケーキなども、歯の間に挟まりやすいので、虫歯の危険性が高まります。また、酸性の強い飲み物は、歯の表面を覆っているエナメル質を溶かしてしまうので注意が必要です。食事中にコーラなどの炭酸飲料やジュースを飲んでいる場合は、出来る限り「お水・お茶・酸性度の低い牛乳」に変えましょう。

「しっかり噛むこと」の大切さ

近年、食生活の変化によってやわらかい食べ物が増え、食事の際の「噛む回数」が減ってきている傾向にあります。やわらかい食べ物ばかりを食べていると、口の周りの筋肉が衰えてしまいお口の機能がうまく育たなくなってしまいます。

しっかりと噛むことで唾液が分泌され、虫歯の予防にもつながるだけでなく消化吸収もされやすく、満腹中枢も刺激されるので食べ過ぎ防止にもつながります。また、噛むことで脳への血流量が増えて脳神経も刺激され、ホルモンが分泌されるので、意欲向上や運動神経の発達にまで関連するともいわれています。

「よく噛むこと」はさまざまな相乗効果が期待できます。毎日の食事でしっかりと「噛む」ということを心がけましょう。

「噛む」ことで唾液の優れたパワーをプラス

唾液は口内を潤すためだけに分泌されているわけではありません。例えば、会話や食事といった日常生活はもちろん、歯の健康を守るためにも大切な役割を果たしています。

【唾液の働き】

  • 唾液に含まれるアミラーゼ(酵素)が食べ物に含まれるでんぷんを分解し、消化を助ける
  • 歯の再石灰化や口の中の傷を治りやすくするなど、お口の中を修復する
  • 口の粘膜を保湿・保護し、傷つきにくくし、舌やのどの動きをスムーズにする
  • 食事後に酸性に近づいたお口の環境を、唾液が中和することで、虫歯から歯を守る
  • お口の中の汚れを洗い流してきれいにする
  • 抗菌作用で口からの細菌感染を防ぐ
  • よく噛んで食べ物と唾液をしっかり混ぜ合わせることで、食べ物の味を感じやすくする
  • 食べ物を柔らかくし、飲み込みやすくする など

こんなにも多くの働きがある唾液ですが、唾液の効果だけではお口の健康を守ることは出来ません。日頃のケアをしっかり行い、唾液のパワーをプラスすることで、よりお口や身体の健康を守る効果が期待できます。基本のホームケア(歯磨きなど)は忘れずに継続していきましょう。

唾液については、『唾液は歯を守る強い味方』という記事でも紹介していますので、よければチェックしてみてください。

まとめ

食育は、子どもたちの健康な成長において大切な要素です。歯科と食育は、密接に関係しており、健康な食習慣を育むことは、お口の健康にも直結しています。「だらだら食べ」、「噛まずに食べる」「糖分の多い食事」この3つの食習慣をおこなっている場合は、早めに正しい食習慣に直していけるようにしましょう。

また、食習慣の中で「しっかりと噛む」ということは、様々な相乗効果が期待でき、毎日の食習慣の中で意識して欲しい大切な食習慣の一つです。普段あまり噛まずに食べているという方は、噛む回数を多くできるように意識していきましょう。「しっかりと噛む」ことで唾液の優れたパワーを引き出していきましょう!

記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁

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