歯周病のリスクファクター-歯並び編-

歯周病はプラークの中の細菌が原因であることが知られています。

しかし、近年では、歯周病を進行させる原因としては、他にも多くの要素が関わっていると言われるようになっており、それらをリスクファクターと呼びます。

歯周病のリスクファクター-喫煙編-

歯周病のリスクファクター-糖尿病編-

と紹介してきましたが、今回は3つ目のリスクファクターとして「歯並び」をご紹介します。

歯並びの悪さが身体に及ぼす影響

歯並びが悪いまま放っておくと、噛み合わせの不具合が起こり、お口だけでなく首や肩そして腰や骨盤と、つながりのある部位にも負担が発生します。その結果、頭痛や肩こり、腰痛など様々なトラブルを引き起こしやすくなり、慢性的な症状になってしまう方もいます。歯並びが悪いことは、全身に影響を及ぼしてしまいます。その悪影響の一つに歯周病も挙げられます。

歯周病については「歯周病は再発しやすいお口の病気」でご紹介しているので、よろしければこちらをご覧ください。

歯並びが悪いと歯周病になりやすい

歯並びが悪いことで、歯磨きの時に磨き残しが増えます。プラークコントロールが不良になることで、虫歯や歯周病が進行しやすくなってしまいます。また、噛み合わせの悪い人の中には、口を閉じるのが難しくなり口呼吸になっている事があります。口呼吸になることで、虫歯や歯周病の進行を防いでくれる唾液も出にくくなってしまい、虫歯や歯周病の悪化につながります。

歯周病が原因で歯並びが悪くなることもある

歯周病は歯茎に起こる感染症で、歯周ポケットに歯垢(プラーク)が溜まることで発症します。歯垢に潜む歯周病菌が出す毒素によって歯を支える骨(歯槽骨)が溶かされることで、歯がグラグラと動き出し、やがては抜け落ちてしまいます。歯周病が原因で歯がグラグラになると、歯は動き易い方向に移動してしまいます。歯が不自然な位置に移動して、それによって、噛み合わせが悪くなり、さらに歯周病を悪化させるといった悪循環にもなります。

歯並びが悪くなる9つの原因

歯並びが悪くなる原因は、「遺伝などの先天的な原因」「生活習慣など後天的な原因」の2つに分けられます。先天的な原因を防ぐことは難しいですが、生活習慣が原因の場合は事前に防ぐことが可能です。生活習慣など後天的な原因である長年のクセで歯並びが徐々に悪くなる可能性があります。当てはまるクセがないか確認してみてください。

●指しゃぶり

指しゃぶりを続けていると指が上下の歯の間にはさまった状態が続くため、指に押されて出っ歯開咬になる可能性があります。

●頬杖(ほおづえ)

頬づえをつくとあごが片方に押されている状態になります。歯の位置がずれてしまいます。歯が押されることで歯並びが悪くなったり左右にズレを生じることがあります。

●うつぶせ寝

身体の中で1番重たいとされる頭の重さが、片側の顎に長時間力がかかり続ける状態になり、歯の位置がずれてしまいます。

●口呼吸

口呼吸により口が開いていることが多くなることで、舌や顎の位置が下がってしまうため、歯並びが悪くなる原因になります。口がポカンと開いていることが多い場合には、口呼吸になっている可能性が高いです。

●唇を噛む

頻繁に唇を巻き込むように噛む癖のある人は、その度に前歯に不適切な方向から力がかかっていることになります。

●食べ物を片側でしか噛まない

左右のバランスがくずれ、顔の歪みにもつながります。

●舌を歯に押し付ける

前歯を舌を押し続けることによって出っ歯(上顎前突)になります。舌の癖があるままだと、歯列矯正の効果が得にくいことがあります。

●爪を噛む

爪を噛むことは歯や歯茎に大きな負担であるとともに、不自然な力のかかり方が続くことで、噛み合わせがずれて顎関節にも悪い影響を及ぼします。

●虫歯や歯周病菌を放置

歯や歯を支える歯周組織が欠損し、健康な歯へかかるバランスも崩れることになります。歯周病が原因で歯がグラグラになると、歯は動き易い方向に移動してしまい歯並びに影響を及ぼします。

あなたの歯並びをチェックしてみましょう

お口の状態を下の項目でチェックしてみてください。

□上下の歯の中心が合っていない

□周りの歯と比べてすり減っている歯がある

横顔を確認した時に、極端に唇が出っぱっていたり、へこんでいる

□歯をかみ合わせた時に、上の歯がすべて下の歯を覆うように位置している

□明らかに顔が非対称になって歪んでいる

□隣の歯同士が重なっていたり、逆に大きく空いている

□上下の唇が閉じにくい。閉じたときに、あごの先にシワが出来る。

□食べ物がいつも詰まりやすかったり、部分的にいびつになっている歯がある。

チェックが多く入った場合は、不正咬合(ふせいこうごう)の可能性があります。歯並びや噛み合わせの状態が良くない状態を「不正咬合」といいます。不正咬合には多くの種類があるので、下記でいくつかご紹介します。ご自身に当てはまっているものがないか、こちらも合わせてチェックしてみてください。

不正咬合の種類

下記の不正咬合は一部です。他にも種類があり、これらの複合的なものがほとんどで、患者さまごとに状況が異なります。しっかりとした診断が必要となるので一度歯科医院で診てもらう事をオススメします。

叢生(そうせい)

歯列不正のうち「叢生」が44.3%を占めています。(厚生労働省平成23年歯科疾患実態調査)八重歯も叢生の一種です。歯ブラシしづらいため、歯周病や虫歯、口臭が悪化、口内炎ができやすいなどのリスクがあるため早めに治療をしましょう。顎のサイズに対し歯のサイズが大きく、スペースが足りないことによって起こります

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上顎前突は、上の前歯や上あごが前方に出ている歯並びで出っ歯とも呼ばれます。顎の骨に問題がある場合と、歯だけ前に出ている場合とがあります。指しゃぶりや舌を歯に押し付けることが原因となる場合があります。

下顎前突(かがくぜんとつ)

下顎前突は、下の歯が突き出て噛み合わせが上下逆になっている状態です。受け口とも呼ばれていて、見た目の悪さ以外に、発音への影響、顎関節症を誘発するリスクがあります。指しゃぶり、舌で下の歯を押す、頬杖をつくことが多い、口呼吸が後天的な下顎前突の原因となる場合があります。

開咬(かいこう)

開咬は、奥歯を噛み合わせても前歯が噛み合わずに開いてしまう状態です。気づかずに奥歯を使いすぎている場合があり、顎の関節や筋肉に相当な負荷をかけて顎関節症を併発していることもあります。生活習慣では、舌や指しゃぶり、口呼吸が開咬の原因になります。

歯並びを治すならインビザライン矯正もオススメ

不正咬合は、歯列矯正によって改善することができます。歯列矯正の一つにインビザライン矯正というものがあります。透明のマウスピースを装着するだけなので目立ちにくく、見た目を気にすることなく治療が可能です。インビザライン矯正は、データ分析による機械学習、治療計画と製造の自動化などの技術革新の組み合わせによって開発された“マウスピース”を使用した世界で最も普及している矯正のひとつです。

インビザライン矯正については、詳しくはこちらをご覧ください。

大人になってからの矯正リスク

大人になると組織反応(再生治癒)が遅くなります。歯を動かして並びを良くするの矯正治療ですが、動いた歯の周りの組織が自己治癒力で形状を変えていきます。個人差はありますが、大人になってからの矯正は歯周に負担が掛かり、痛みを伴いやすい場合があります。

しかし、歯列矯正によって歯並びが良くなることで、虫歯や歯周病の予防につながり、口臭を防ぐことができます。何より歯並びが綺麗になることで自分に自信を持てるようになります。リスクを理解した上で、矯正治療を受けていただく事をオススメします。

歯並びを矯正をすることが歯周病予防にもなる


矯正治療によって磨きやすい綺麗な歯並びにすることは、見た目だけでなく、歯周病予防にもなります。歯周病の原因となるのはプラークであり、歯ブラシをすることによってプラークを取り除くことが一番の予防となります。歯ブラシのしやすい歯並びにすることにより、プラークを溜めにくい口腔内にすることが可能です。

歯周病がある場合は歯周病治療を先に行います

歯周病の症状が軽ければ歯科矯正は可能です。しかし、歯周病が進行している場合は、インビザライン矯正に限らず、他の矯正治療も行うことが難しくなります。まずは歯並びを治す前に、歯周病治療で健康を取り戻し歯周再生力を高めてから、矯正治療に取りかかるのがベストです。歯周病の治療を先に行うことで歯科矯正が受けられるようになります。

まとめ

歯並びが悪いことはお口だけでなく全身にも影響を及ぼします。そして歯周病と噛み合わせは相互に関係し合っています。口腔環境を整えることで、健康的な身体を維持しましょう。

歯周病も歯並びの悪さも、どちらも早いうちに治す事で、将来的に大切な歯を守ることにつながります。少しでもお口の事で、気になる事があれば歯科医院で一度診てもらう事をオススメします。

記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁

SNSでもご購読できます。

コメント

    コメントを残す