『口呼吸』していませんか?体への悪影響と対策

普段、無意識のうちに行っている呼吸ですが、空気を吸ったり吐いたりするのが、鼻からか口からかを意識したことはありますか?

今までに周りの方に「口が開いてるよ」と指摘を受けたことがある人、口が渇きやすい人、唇が割れやすい人などは、「口呼吸」をしている可能性があります。

今回は、「口呼吸」が及ぼす悪影響と対策についてのお話しをします。

正しい呼吸は「鼻呼吸」

呼吸には、鼻から空気を取り入れる「鼻呼吸」と、口から息を吸い込む「口呼吸」の2種類があります。本来正しい呼吸の仕方は「鼻呼吸」です。

通常、「鼻呼吸」によって外から取り込んだ空気は鼻に入って加湿され、そのまま喉から肺へと取り込まれます。鼻から呼吸することで、空気中に漂う雑菌やほこりなどの異物の大部分が、自然にろ過されるしくみになっています。一方「口呼吸」は、異物を含んだ外気が直接のどへと入り込むため、細菌などの病原体が取り込まれやすくなります。

口呼吸が及ぼす悪影響

口呼吸は健康に悪影響があるだけでなく、様々な影響を及ぼします。

●風邪を引きやすくなる(ウィルス感染しやすくなる)

鼻呼吸では、鼻の粘膜が空気中の雑菌やウイルスをカットしてくれますが、口呼吸では、これらの物質が直接体内に入るため、風邪などの感染症にかかりやすくなります。

●虫歯、歯周病、口臭の原因になる


口で呼吸するため、口の中が乾燥してしまい唾液による抗菌作用が発揮されず、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすくなり、虫歯、歯周病、口臭のリスクが高くなります。

●酸素の摂取量が落ちる


口呼吸は鼻呼吸に比べて酸素の摂取量が少なくなります。脳に十分な酸素が供給されず集中力が低下し、代謝も落ちます。酸欠の状態になると免疫力の低下、頭痛、嘔吐、脱力感、筋力の低下、集中力低下など様々な不調を引き起こす恐れがあります。

●顔の筋肉が劣化したり歯並びが悪くなる


口をいつも開けていると顔の筋肉が劣化して筋肉がたるむだけでなく、前歯が押し出されて歯並びも悪くなる可能性もあります。特に小さいお子さまは将来の顔の表情に大きな悪影響があるため、口呼吸に気づいたら早めに治してあげる事が大切です。

●睡眠時無呼吸症候群の引き金になる


口をあけて寝ていると舌が後方に落ち込んで気道をふさぎ、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす恐れがあります。またそれに伴い、いびきをかくこともあります。無呼吸を伴ういびきは、いびきがしばらく止まり(平均30秒)、その後あえぐような激しい息、またはいびきで呼吸が再開するのが特徴です。

※睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)とは、口や鼻、肺へと続く空気の通り道が狭くなることで、眠っている間に呼吸が止まる状態が繰り返される病気のことです。

口呼吸を改善するためにできること

歯並びが元々悪かったり、副鼻腔炎、鼻炎などで鼻が慢性的に詰まっていて鼻呼吸がしづらかったりする場合は、まずはそちらを治療する必要があります。歯科医院では、歯ならびが原因なら矯正治療を、口の周囲の筋力の低下に原因があるのなら、口腔筋機能療法という筋力トレーニングを指導します。しかし、それ以外の習慣や癖で口呼吸になっているのであれば、自分で意識をして直すことができます。

睡眠時にテープを口に貼る

日中は意識して鼻呼吸ができても、寝ているときは気づかない間に口呼吸になっていることもあります。睡眠時にサージカルテープで唇を固定すれば、寝ている間にポカンと口が開いてしまうのを防げます。「鼻呼吸テープ」というものも販売されていますが、テープは専用のものでなくても構いません。ドラッグストア等で売っている医療用のテープを、口が閉じるように縦にやさしく貼るのもいいでしょう。肌がかぶれやすい方は低刺激のメッシュ素材のものがおすすめです。 

あいうべ体操

あいうべ体操とは、口呼吸を鼻呼吸に改善していく簡単な口の体操です。一日30回を目安に地道に続けると、舌力がついて自然を口を閉じることができるようになります。口呼吸が改善するだけでなく、顔のたるみ・しわの改善による美容効果、脳の血流をアップさせる効果など、多くの効果が得られます。

【あいうべ体操の仕方】

あいうべ体操は、「あ~」「い~」「う~」「べ~」と口を動かすだけの簡単な体操です。声は出しても出さなくてもかまいません。大きく口を動かし、ゆっくりと行うのがポイントです。

1日30セット行う

  1. 「あー」と言いながら大きく口を開ける
  2. 「いー」で口を横にする
  3. 「うー」で口をすぼめる
  4. 「べー」で思いっきり舌を出す

まずは意識して「鼻呼吸」を体に覚えさせよう

まずは自分が口呼吸をしている、という自覚をしっかりと持ち、日頃から「鼻呼吸」をするように意識することが重要です。鼻呼吸を意識的にさせることで口が閉じる時間が長くなり、口周りの筋肉を鍛えられます。最初は慣れなくて少し苦しいかもしれませんが、自分で気がついたときに意識して口を閉じて鼻呼吸にするだけで、だんだん体も鼻呼吸のリズムを覚えてくれます。まずは意識をするところから始めましょう。

まとめ

普段、無意識にしている呼吸ですが、口呼吸になっている方も少なくないと思います。口呼吸は、お口のトラブルだけでなく、睡眠時無呼吸症候群の引き金にもなります。

口呼吸は無意識にしていることなので、まず自分の呼吸に意識を向けることが大切です。口呼吸を自覚している場合は、睡眠時に口にサージカルテープを貼ったり、「あいうべ」体操で口元の筋肉を鍛えるなどの方法がオススメです。そして、普段の生活から意識的に「鼻呼吸」をするように心がけ、口呼吸が引き起こす様々な悪影響からお口を守りましょう。

記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁

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