
「歯ぐきが腫れている気がする…」「歯みがきのときに血が出る…」
そんな症状に心当たりはありませんか?もしかすると、それは歯周病のサインかもしれません。
歯周病は、初期段階ではほとんど自覚症状がないまま進行しますが、放置すると歯を失うだけでなく、全身の健康にも影響を与える可能性がある怖い病気です。今回の記事では、歯周病がインプラント治療に与える影響について解説します。
目次
歯周病とは?「沈黙の病気」といわれる理由

歯周病とは、歯周組織(歯を支える歯ぐきや骨など)が、歯周病菌によって炎症を起こし、破壊されていく病気です。虫歯のように歯自体が痛くなるわけではなく、痛みを感じないまま進行するため「沈黙の病気」とも呼ばれています。
歯周病の進行段階と症状

歯周病は進行段階によって症状が変わります。症状が進むと、歯茎の腫れや出血、歯がグラグラする、噛むと痛いなどの症状が現れます。最終的には、歯が抜け落ちてしまうこともあります。進行するほど治療が難しくなり、自然な歯を残すことが困難になります。
段階 | 主な症状 |
---|---|
歯肉炎(初期) | 歯ぐきが赤く腫れる、出血しやすくなる |
軽度歯周炎 | 歯ぐきの腫れに加え、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)が深くなる |
中度歯周炎 | 歯槽骨が溶けはじめ、歯が少しグラつくように |
重度歯周炎 | 歯のぐらつきが強くなり、最終的には歯が抜ける |
歯を失った後の治療法の選択肢の1つである「インプラント」

歯を失った場合、治療選択肢としてよく挙げられるのが「インプラント治療」です。インプラントは、人工の歯根(チタン製)をあごの骨に埋め込み、セラミックなどの人工歯を装着する治療法です。見た目が自然で、しっかり噛めることから近年人気が高まっています。
歯周病がインプラント治療に及ぼす3つのリスク

歯周病が原因で歯を失った方にとって、インプラントは有効な治療法の一つですが、注意が必要です。というのも歯周病がある方は、インプラントの成功率が低くなる可能性があるからです。その主な理由には、以下の3つがあります。
1.インプラントを埋めるための骨が足りなくなる
歯周病が進行すると、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)が細菌によって徐々に吸収・破壊されていきます。インプラントは、この歯槽骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込む治療なので、十分な骨の厚みと高さがなければ固定できません。
2.インプラント周囲炎にかかりやすい
歯周病は、歯周病菌という細菌による感染症です。歯周病菌が多く存在するとインプラント治療後に「インプラント周囲炎」を引き起こすリスクを高めます。インプラント周囲炎になると、歯周病と同じように歯ぐきが腫れたり出血したりするだけでなく、顎の骨を溶かし、最悪の場合、インプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
3.インプラント術部が化膿しやすい
歯周病は慢性的な細菌感染症であり、歯ぐきや周囲組織に炎症や膿(うみ)が生じやすい環境ができています。その状態でインプラント体を顎の骨に埋め込む手術をすると、手術部位に細菌が入り込み、化膿や感染を引き起こすリスクが高まります。とくに糖尿病や喫煙習慣がある方は、さらに感染リスクが高まるため慎重な判断が必要です。
歯周病の場合は歯周病の治療を優先する

インプラント治療を希望される方が歯周病を抱えている場合、まずは歯周病の治療を優先します。歯石除去や歯周ポケットの洗浄、投薬などを行ってしっかり治療し、歯ぐきの炎症が落ち着き、口腔内の清掃状態が安定してから治療を行えばインプラント治療を成功させることは十分可能です。
顎の骨が足りない場合は「骨造成」が必要になる場合もある

「骨造成」とは、インプラントを埋め込むための顎の骨の量が不足している場合に、人工的に骨を増やす手術のことです。骨造成の手術を行えば、骨の量や厚みを増やすことができ、インプラントを埋め込んだときに起こりがちなトラブルを防ぎ、安全に手術を行える可能性が高まります。
歯周病のリスクを下げるためにできること

日頃から歯周病のリスクを下げておくことは、全身の健康管理においても大切です。歯周病から自分の大切な歯や健康を守るためにも、毎日の生活の中で以下のことに気をつけましょう。
1. 正しいブラッシング習慣を身につける

歯周病の原因である歯垢をしっかり除去するには、毎日の丁寧な歯みがきが基本です。1日2回、歯と歯ぐきの境目を意識して丁寧に磨きましょう。磨き残しを減らすためには、自分の歯並びに合った歯ブラシを使用し、デンタルフロスや歯間ブラシの併用することも効果的です。
2. 定期的な歯科検診を受ける

歯周ポケットの深さや出血の有無など、専門的なチェックが大切です。初期の歯肉炎は自覚症状がほとんどないため、検診での早期発見が大切です。歯科医院での定期的なチェックとプロによるクリーニング(PMTC)で、歯周病の進行を防ぐことができます。
3. 生活習慣の見直し

睡眠不足やストレスは免疫機能を低下させ、歯周病菌に対する抵抗力が弱まると言われています。十分な睡眠とリラックスできる時間の確保を心がけましょう。そして、歯茎を強くするためには、ビタミンC、カルシウム、コラーゲンを豊富に含む食品を積極的に摂取することが効果的です。もし喫煙をしている方は、歯周病の大きなリスク要因になるため、禁煙を心がけましょう。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。▶︎歯周病のリスクファクター-喫煙編-
まとめ:まずは自分の歯ぐきを知ることから始めましょう

歯周病は決して他人事ではありません。日本人が歯を失う最大の原因であり、40代以上の約8割がかかっているともいわれています。歯周病に罹患している場合インプラント治療も難しくなってしまいます。
「最近、歯ぐきの調子が気になる」「何年も歯医者に行っていない」そんな方は、まずは歯科医院でのチェックをおすすめします。早期発見・早期治療こそが、一生自分の歯で過ごすための第一歩です。
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記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁