
朝の歯磨き中、ふと歯ブラシに付いた血に驚いたことはありませんか?「歯茎からの出血=歯の病気」と思いがちですが、実は内臓の不調が関係していることもあります。この記事では、歯茎からの出血の原因と、歯科的・全身的な視点からその背景を解説します。
目次
歯茎から血が出る主な原因とは?
歯周病(歯肉炎・歯周炎)

もっとも多い原因が歯周病です。プラーク(歯垢)に含まれる細菌が歯茎に炎症を起こし、腫れや出血を引き起こします。初期段階の「歯肉炎」では歯磨きや食事中に出血する程度ですが、進行すると「歯周炎(歯周病が進行した段階)」となり、歯を支える骨が溶けてしまいます。その結果、歯を支えられなくなることで、最終的には歯が抜けてしまいます。
間違ったブラッシング

歯磨きの力加減は、150~200g程度の軽い力で、歯ブラシの毛先がわずかに曲がる程度が理想です。力を入れすぎた歯磨きや硬すぎる歯ブラシの使用は、健康な歯茎でも傷つけてしまい、出血の原因になります。特に磨き方に自信がない方は、一度歯科医院でチェックしてもらうことをおすすめします。
内臓の不調が原因の場合
歯茎からの出血は、お口の中だけが原因ではありません。実は、内臓の不調が原因で出血が起こることもあります。歯茎の出血が起こる内臓の不調には、以下のようなものがあります。
肝臓や腎臓の異常

肝臓は血液を固めるための凝固因子を作っています。肝機能に異常があると、これらの因子がうまく働かず、歯茎などから出血しやすくなることがあります。また、腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物がうまく排出されず、免疫力の低下や炎症の悪化にもつながります。
糖尿病の影響

糖尿病の人は血糖値のコントロールが難しくなることで免疫が低下し、歯周病が進行しやすくなります。さらに、歯周病が悪化するとインスリンの働きが悪くなり、糖尿病も悪化するという悪循環に陥ってしまいます。
▶︎以前に、歯周病のリスクファクター-糖尿病編-という記事で、歯周病と糖尿病の相互関係についてご紹介しています。よろしければご覧ください。
血液に関係した病気による影響

白血病、血友病、血小板減少性紫斑病、壊血病、再生不良性貧血といった血液に関係した病気がある場合、歯茎からの出血が止まりにくくなります。ただし、このような病気がある場合には、歯茎からだけではなく、体の他の部分の出血傾向(鼻血が出る、青あざができやすいなど)も見られます。
歯茎からの出血は歯や身体からの不調のサイン

たかが歯茎の出血と思って放っておくと、以下のような深刻なリスクに繋がる可能性があります。
- 歯周病の悪化で歯が抜けるリスクが高まる
- 全身疾患(糖尿病・心疾患・脳梗塞など)の引き金になる
- 美容面でも口臭や歯の黄ばみが目立つ・・・など
「歯茎からの出血」は身体からのサインです。早めに歯科医院で相談しましょう。
歯科医院での専門的ケアを受けよう

出血の原因を見極めるためには、歯科医院で行う歯周ポケット検査やレントゲン診査が必要です。また、定期的な歯石除去やクリーニングも歯周病予防に効果的です。また、歯科医院では、必要に応じて内科との連携も行います。歯茎の状態から全身の異変が見つかることもあるため、定期的な歯科検診を行い、お口だけでなく全身の健康を維持しましょう。
自宅でできる対策とは?
歯周病の主な原因は、歯茎に付着した歯垢(プラーク)です。プラークは初期段階では柔らかく、時間が経つと唾液の成分と結合して硬い歯石に変わります。毎日のお口のケアでプラークを取り除きましょう。
1. 正しいブラッシング

歯ブラシは柔らかめの毛先を選び力を入れすぎず、優しく小刻みに動かすのがポイントです。磨き残しやすい奥歯や歯と歯の間も丁寧に磨きましょう。炎症した部分からは出血が見られるかもしれませんが、優しく磨くことで次第に落ち着いていきます。適切なケアが炎症の改善につながります。
2. デンタルフロスや歯間ブラシの併用

プラークは歯ブラシだけでは約60%しか除去できないと言われています。プラークは、歯ブラシの毛先が届きにくい部分、特に歯と歯の間に残りやすいです。デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、効果的に汚れを取り除けます。日々のケアに取り入れるようにしましょう。
3. バランスのとれた食生活

歯茎の健康に欠かせない栄養素は、ビタミンC(コラーゲン生成を助け、歯茎の健康を維持する)、タンパク質(歯茎の主成分であるコラーゲンを構成する)、カルシウム(歯と歯茎を支える骨を強くする)です。
- ビタミンC:レモン、キウイ、オレンジなどの柑橘類、緑黄色野菜など
- タンパク質:肉類、魚介類、卵、大豆製品など
- カルシウム:牛乳、チーズ、ヨーグルト、干しエビ、ちりめんじゃこなど
毎日の食事で野菜・果物・魚・肉などをバランスよく摂取しましょう。
まとめ:小さな出血が大きな病気のサインの可能性も

歯茎からの出血は、ただの歯磨きの傷では済まされないこともあります。歯周病のサインであると同時に、内臓疾患の兆候である可能性もゼロではありません。歯磨きの際に鏡を使って歯茎の状態のチェックをして、歯茎からの小さな出血を見逃さないようにしましょう。
あなたの健康は、歯茎からも見えてきます。小さな出血を見逃さず、早めのケアと検診で健康を守りましょう。
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記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁