親知らずによって引き起こされるトラブルと抜歯

みなさん、親知らずはどのように生えていますか?

痛みや腫れがなく、親知らずがまっすぐに生えて機能している場合には抜歯の必要はありません。しかし、横向きに生えていたり、埋まっている親知らずを放置した場合などはトラブルになることがありますので注意が必要です。また、生え方によっては、外科的な抜歯が必要になることがあります。

今回は、痛みや腫れなど、トラブルを起こしがちな親知らずについてご紹介します。

親知らずとは?

親知らずとは、歯の一番奥に生える永久歯で「智歯(ちし)」「第三大臼歯(だいきゅうし)」とも呼ばれ、親知らずを含めると、人間の永久歯は合計32本生えます。

生えてくる時期には個人差がある

親知らずが生えてくる時期には個人差がありますが、一般的には18~22歳頃で、稀に30・40歳頃に出てくることもあります。他の歯と違い、親が歯の生え始めを知ることがないことが、「親知らず」という名前の由来とされています。

親知らずが「ない」場合もある

親知らずがすべてある場合は、上下左右に1本ずつの全部で4本です。肉眼では確認できない場合でも、歯茎の中に埋まっている親知らずも存在します。また、レントゲンで撮影しても、親知らずが全く存在していないケースもあります。親知らずがない場合、4本全てないこともあれば、1〜3本だけない事もあります。

親知らずによって引き起こされるトラブル

親知らずがまっすぐ生えてきて、綺麗に磨ける場合は、特に問題にならない事もあります。しかし、親知らずによって何らかのトラブルが生じる場合には、抜歯が必要になります。

虫歯

親知らずは一番奥にあるので歯ブラシが届きにくく、どうしても磨き残しが出るため、虫歯菌の温床となりやすい歯です。また、親知らずと手前の歯(第二大臼歯)の隙間に汚れがたまりやすくなり、手前の歯が虫歯になることもあります。親知らずが虫歯になっても抜歯すれば済みますが、虫歯が進行してしまった場合は手前の歯も抜かなければいけない場合もあります。

歯肉の炎症

傾斜して生えたり、途中までしか生えてこなかったりすると、親知らずの上に歯肉が被った状態になるなど、衛生管理が行いにくくなります。これにより親知らず周囲の歯肉に炎症が起きてしまい「智歯周囲炎」と呼ばれる状態になります。痛みや発赤などが初期症状ですが、進行すると腫れがひどくなって口が開けられなくなり、骨膜炎などを併発する恐れがあるため、注意が必要です。智歯周囲炎がひどい場合は、炎症が軽減してから抜歯を行います。

口臭

親知らず周辺は不衛生になりやすいことから、口臭の原因になってしまう可能性もあります。炎症によって歯肉に膿がたまったり、虫歯が進行したりすることも臭いの原因になります。

歯根の吸収

親知らずが手前の歯に強く力をかけているようなケースでは、手前の歯の根っこが溶けてしまう(歯根吸収)可能性があります。歯根吸収が進むと、親知らずだけでなく手前の歯(第二大臼歯)の抜歯も必要になることがあります。

親知らずの抜歯

親知らずがまっすぐに生えてきた場合には、他の歯と同じように抜歯することが可能です。しかし、親知らずは斜めに生えてきたり、途中までしか生えてこないことが多く、この場合、通常よりも抜歯が難しくなります。現代人の骨格の変化により、親知らずはまっすぐに生えてこないケースも増えています。

抜歯方法

抜歯のために歯肉を切開したり、歯や歯根を分割したり、骨を削るなどの外科的な手術が必要となることがあります。下の方法は一例で、親知らずの状態によって手術方法は変わります。

親知らず抜歯の痛み

親知らずの抜歯自体は、麻酔をかけて行いますので痛みが伴うことはほとんどありませんが、下顎は骨が緻密であるため、麻酔が効きにくいことがあります。そのため、十分に麻酔を効かせてから抜歯を行います。そのため、基本的には手術のあいだや手術直後には痛みは感じにくいです。

しかし麻酔が切れた後は、痛みが生じます。痛みの程度は、親知らずの生え方や抜歯方法により異なります。抜歯後3~7日程度、痛みが続く場合もありますが、鎮痛剤を服用する事で痛みをコントロールすることが可能です。

親知らずの抜歯後に気をつけること

患部は冷やしすぎない(10分冷やしてから10分休憩させるなど)

▷冷やしすぎると血流が阻害され傷の治りが悪くなるため

痛み止めは効果が切れる30分前に服用

▷麻酔が切れる前に効果が出るので痛みをコントロールしやすくなるため

強くゆすがない

▷抜歯した後の血の塊はかさぶたになり、抜歯して破壊された組織を治してくれるため

喫煙は控える

▷血流が極端に悪くなり傷の治りが悪くなるため

体温が上がるような運動やお風呂や飲酒をなるべく避ける

▷血流が良くなりすぎると炎症が強くなるため

抜歯後は麻酔が切れた当日が痛みのピークです。その後は基本的には、徐々に痛みはひいていきます。ただ、抜歯後処方された痛み止めを飲んでも効かない場合や痛みが継続する場合には、我慢せずに歯科医院に相談してみてください。

まとめ

親知らずはまっすぐ正しい方向に歯が生え、上下の歯同士がきちんと噛み合わさっている場合は特に問題はないので、急いで抜歯する必要はありません。しかし、親知らずは一番奥の大きな歯なので、普段のケアが難しく虫歯や歯周病になってしまうこともあります。親知らずのケアは意識して丁寧なケアをしましょう。

他の歯や歯ぐきに悪影響を与えている親知らずは、抜歯をオススメします。術後に痛みや腫れが出ることがありますが、痛み止めや抗生物質でコントロールすることが可能です。気になる親知らずはそのままにせず一度歯科医院で診てもらいましょう。

記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁

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